2017年8月1日火曜日

「魂の性別」展に寄せて

 魂に性別があるのなら
 その由縁はどこにあるのだろう
 自由な魂は身体を越えて表出する
 あらわれる本当の姿は
 魂の在り処を教えてくれるーーー

 書肆ゲンシシャは、2017年8月から、終期未定で、「魂の性別」展を開催いたします。

 展示する写真は、LGBTの古写真。今から100年ほど前の、ゲイの、レズビアンの、同性婚や異性装の古写真です。
 ゲイや、レズビアンの古写真は、一見しただけでは、本当に同性愛者なのか、それとも仲が良い友達なのか、不明なところが多々あります。
 そこで、今回は、同性婚や異性装など、セクシュアリティが前面に出ている写真を選び、展示することにしました。

 同性婚が認められたのは、まだ最近の、2001年、オランダでの話です。となると、100年前のゲイやレズビアンが、法のもとに認められていなかったにもかかわらず、同性婚を挙げ、その記念写真を撮影する姿からは、強い意志が感じられます。

 また、明治時代の日本では、 明治6年に発令された違式詿違条例で一般人の男装・女装が禁止されていたことがあります。江戸時代には男娼が存在し、同性愛が半ば公然と認められていたにもかかわらず、西洋化を推し進める明治政府によって取り締まりの対象になったのです。

 そうした経緯を踏まえてLGBTの古写真を見ると、なおさら感慨深いものがあります。

 また、ゲイに比べてレズビアンについて書かれた文献が少ないことも記しておきます。レズビアンは、確かに女性同士で恋愛を育んでいたものの、ゲイに比べて、当時社会の中心にいた男性たちの害にならないという理由で、さして気にかけられなかったという事情があります。ここでも、男性と女性という性差によって、差別が行われていたのです。

 性というものは、性器の形状や、体つきによって、表面的にあらわれています。それでは、人間の魂には果たして性別があるのでしょうか。
 人間の魂にもし性別がないのなら、 表面的な性にとらわれない自由な魂の表出があり得るのではないか、魂の意志があり、それに従うならば、当然尊重すべきではないか。
 そうした問いかけを、本展は含んでいます。

 ゲイの結婚式では、またレズビアンの結婚式では、多くの場合、片方が異性の格好をし、タキシードとウエディングドレスで揃えているところが気になります。
 あくまでも心は、男性と、女性という役割を担っていたのでしょうか。その辺りについても今一度問いかけてみたいと考えています。

 100年前と現代の、異なる社会、その中で人間の心はどのように変化してきたのか、その辺についても思いを馳せていただければと考えています。

 生と死の境界を曖昧にする死後写真の「永遠の命」展に対し、「魂の性別」展は男と女の境目を曖昧にします。
 ゲンシシャが発する新しい問いかけの、みなさまの回答をお待ちしております。