2018年12月25日火曜日

書肆ゲンシシャ、3度目の年末~別府で活動するメリットとデメリット


 書肆ゲンシシャをはじめて三年が経ちました。
 今回は、別府において活動する上でのメリットとデメリットを書きます。

メリット
    コストが安い
食費、住居費などあらゆる面で都会で活動するより安上がりで済みます。
    人脈を作りやすい
人口12万人ほどの小さな町で、おまけに人口密度大分県1位なので、主要な方々とすぐ「お友達」になれます。
    人が少ない
私のように一人で居ることが好きな人間には、1時間町を徘徊して誰とも会わないこともあるこの町はある意味オアシスです。
    チャンスが多い
とにかく人材が不足しているので、多少なりとも目立つと仕事が次々に舞い込んできます。都会が大企業だとすれば、田舎は中小企業です。
    観光地である
観光地であり、さらに「アートで町おこし」を実践している別府は、人口12万人都市にしては、都会からの集客が見込め、アートに対する関心も高い。
    立命館アジア太平洋大学(APU)の存在
人口12万人都市でありながら、3500人の外国人を擁し、国際化が進んでいます。
    食事が美味しい
海の幸が格安で手に入るうえ、観光地であるため、外食産業のレベルが高い。

デメリット
1 交通の便がわるい
  大分空港からバスが出ているものの時間がかかり、新幹線もないため、東京方面からの交通は不便。ただし、大阪からはフェリーがあります。
2 仕入れが難しい
  大分県内では稀覯本の類は稀であり、都会にまで仕入れに行かなければなりません。本人の交通費のほか、本の輸送費もかかります。
3 需要が少ない
  人口が少なく、ニッチな需要が少ないため、都会からの客頼みになってしまいます。
4 しがらみが多い
  町の主要メンバーがほとんど知り合いなので、派手な活動はしにくい。
5 高齢者が多い
  40代の人物でも「若者」と呼ばれてしまうほど高齢化が進み、価値観の固定化も進んでいます。新しいものを受け入れる余裕がほしい。
6 施設が古い
  公共施設やマンションの老朽化が進み、和式便所のところもいまだに多い。全体的に清潔感がない。
7 共通の話ができる友達が少ない
  高齢者が多く、ただでさえ若者が少ない中、同じ趣味に通じている層は本当に限られています。

 田舎というのは良くも悪くも、「飛び抜けた存在がいないところ」です。高校時代の優等生が都会に行って落ちこぼれるのはよくある話で、才能についても同等の人間が集まるものですし、金銭に関しても飛び抜けた富裕層はいないのです。文化についても、いわゆるテレビを中心にした「普通」の文化が強く根付いているゆえ、アニッシュ・カプーアなんていう先端かつニッチなキーワードには興味を示しません。良くも悪くもみな「大衆」なのです。それが居心地がよいところでもあるし、強い克己心がなければ、都会と同レベルの活動を継続していくことは難しいのです。 
 そのことを己の肝に銘じて、これからも都会からの集客が見込めるゲンシシャであり続けたいと強く思います。

 このことはまた別の機会に改めて書こうと思いますが、やはり田舎にいると入ってくる情報量が、SNSなどを駆使してすら、少なくなってしまいます。人と直接話して入ってくる情報、街の街頭テレビのコマーシャルを始め、最先端の文化に接し続けることが、努力をしていない限り、田舎では困難なのです。今の時代、最大の武器は情報です。これは間違いない。ゆえに、取りこぼしがないよう、常にあらゆる方面に探りを入れています。

 今後とも何卒よろしくお願いいたします。

2018年12月17日月曜日

別府というカオスな町

 前回、12/6でアニッシュ・カプーアの「スカイミラー」が撤去されると書きましたが、その日にはブルーシートで梱包され、来年のラグビーワールドカップの時期に再公開されるそうです。また、来年の桜開花時期にも公開することを検討していますが、協議中なので決定事項ではありません。
 ブルーシートによる梱包は、警備員を立たせる人件費を節約するためです。今回「スカイミラー」は、レンタルという形で別府公園に設置しており、万一傷がついた場合、責任問題に発展するため、24時間体制で警備員に見張らせておく必要がありました。

 さて、今回は、別府のカオスなところを取り上げていきます。
 湯の町別府には、よそでは考えられないようなカオスな日常が流れています。別府の人には当たり前、けれども他の土地の人から見れば奇異にうつることがたくさんあるのです。

①商店街にソープがある
  別府の駅前の商店街は、自動車の普及と共に郊外化が進む中で、廃れてしまっているのですが、廃墟好きにはある種たまらない場所になっています。中でも特徴的なのが、シャッター街になった商店街のはずれに行くと、煌々と輝く店があり、看板をみてみるとソープなのです。
 別府は、竹瓦温泉のあたりがソープ街になっており、六本木などから不人気のため飛ばされてきたソープ嬢が働いています。そもそもこのソープ街も、商店街の目と鼻の先にあるのです。
 そして、このソープに、車椅子の男性が行列をつくっていることもあります。
 「南映」という成人向け映画館も存続していて、子供たちが通う路に裸の女性のポスターが貼られていたり。別府は、性と障がい者にやさしい町なのです。

②川にグッピーがいる
 別府の河川には、あちこちから温泉が流れ込んでいます。側溝から湯気がたちのぼっている風景ももはや日常です。そのため、川に熱帯魚のグッピーが生息しているのです。たとえば、春木川は、水温が一年の平均で21℃もあります。
 子供たちが川でグッピーをつかまえて遊ぶ、なんていうのも別府ならではの光景です。

③日本語が通じない場所が多い
 別府には立命館アジア太平洋大学(APU)があり、在学生の半数が外国人です。APUの特徴として、日本人は日本人、外国人は外国人でかたまる傾向があり、さらに外国人向けで英語で講義をおこなう授業もあるものですから、日本に留学に来たけれど日本語は話せないという外国人学生が多くいます。さらに、別府市内には外国人が経営している飲食店や企業が、人口10万人の都市にしては多いものですから、そうした場所でバイトをしていると、日本語を覚える必要がないのです。
 さらに、別府の観光客は、多くが中国人と韓国人で、彼らが英語で話すものですから、英語が公用語といってもおかしくはないのです。
 カフェに行ってドリンクを注文するにも、英語で、という場合があります。
 日本にいながら日本ではない、不思議な空間です。それでいて外国にまったく興味がないお年寄りもいて、まさに混沌としています。

 初回なので、今回はこのくらいにしますが、いつかまとめられたら、と考えています。ファッショセンターしまむらと100円ショップが入居する「百貨店」トキハ別府店や、入場料が100円の別府市美術館、50万円で土地付きで売られている一戸建て、うどんとカツ丼が看板メニューの「洋食屋」、全ての本が100円もしくは50円の激安古本屋、贋作と作者不詳の作品ばかりを並べている美術館、朝から裸に風呂桶をもって公営温泉に入りに行く老人たちなど、考え始めたらきりがないほど、別府をカオスと言うだけの材料が揃っています。
 今回はひとまずこのへんで。