2021年2月8日月曜日

創造県おおいた

  『アートの創造性が地域をひらく』(ダイヤモンド社)という本を読みました。


 

 別府市をはじめとする大分県は、アートによる地域活性化に力を入れています。

 この本に関わる日本政策投資銀行は、過去にも現代アートと地域活性化~クリエイティブシティ別府の可能性~」と題する調査研究レポートを提出しています。このレポートについては藤田直哉『地域アート』(堀之内出版)でもふれられ、アートによる地域活性化を行う上での問題が批判的に捉えられていました。

 さて、この本を読んでわかることは、大分県におけるアートに大分の代表的な経済人が参加する大分経済同友会が密接に関わっていること、「おんせん県」と「アート県」を二本の柱とする観光振興が行われていることです。そして「創造県おおいた」を掲げ、戦略を練っています。

  別府市ではNPO法人BEPPU PROJECTによる「in BEPPU」「ベップ・アート・マンス」が実施され、大分市では「おおいたトイレンナーレ」が実施されたほか佐賀関と野津原という郊外の廃校になった小学校を使ったアートスペースを設け、竹田市では「竹田アートカルチャー」が実施、「国東半島芸術祭」も実施されました。この一連の動きには大分県全域をアートで活性化する「アート県」構想があるのです。

 近頃は、『家、ついて行ってイイですか?』に別府市のアーティスト・イン・レジデンス「清島アパート」が登場し、同じく別府市にアートホテル「ガレリア御堂原」が完成し各メディアに取り上げられています。

 「edit Oita エディット大分」という大分の「旅行、お風呂、アート」をフリーアナウンサーの宇賀なつみさんがレポートするポータルサイトもできました。

 2018年に実施された「アニッシュ・カプーア in BEPPU」のアンケートで判明したように、別府市内では「別府=アートの町」という概念が浸透してきているものの、大分県外ではまだその概念が共有されていません。しかし、メディア戦略を駆使することで、「別府=アートの町」、ひいては「大分=アート県」という概念をより多くの人に共有してもらおうという試みなのでしょう。

 また、大分県は障がい者アートにも力を注いでおり、2019年に「おおいた障がい者芸術文化支援センター」が開設されました。別府市内でも、福祉施設が続々と障がい者アートに参入してきています。

 大分県がこれほどまでにアートに力を入れていることをご存知でしたでしょうか。東京都内でも「東京ビエンナーレ」が実施されるなど、アートによる地域活性化は全国いたるところでコロナ禍の中でもさらに勢いを増しています。 そんな中での大分県の前進をぜひ見守っていただきたいと思います。