2018年9月3日月曜日

ゲンシシャがワンドリンク付300円を貫く理由

 書肆ゲンシシャは、ワンドリンク付300円で一時間をお過ごしできる仕組みになっています。
 この300円をいつ500円に値上げしようか、考えあぐねたこともありましたが、300円が高いとのご指摘をいくつもいただき、結局300円に据え置いています。
 ワンドリンクというのは、マリアージュ・フレールの紅茶です。銀座で飲むと1000円くらいするらしい。けれども、別府の物価を考えると、300円でも高いのです。
 このことについて、記しておきます。

 まず、まわりの店の価格設定から考えていきましょう。
 ゲンシシャの近くにうどん屋があるのですが、そこはうどん一杯を200円で提供しています。
 また、定食屋では500円で10品が食べられます。
 温泉は、100円で入れます。
 これが別府における平均的な物価なのです。
 それを考えると、あながち300円というのは安くないのです。

 次に、まわりの住民の所得を考えてみましょう。
 別府市民の平均年収は、役所が算出したデータによると、270万円ほどです。
 これは平均の年収なので、ゲンシシャによく来られる20代となると、もっと下がります。
 中でも、アート関係の方がよくいらっしゃるのですが、彼らの所得水準は驚くほど低いのです。
 別府には清島アパートというアーティストが集団で居住・制作をする場所があるのですが、ここの家賃は、水道光熱費ネット代備品代込みで1万円です。けれども、家賃を払えず、滞納してしまう方が多くいらっしゃるのです。
 また、同じくアート関係の方と、別府の隣の大分で遊ぶ約束をして、別府駅で待ち合わせたものの、先に行っててと言われ、私一人で電車に乗ることになりました。
 その友達はどうしたかというと、別府駅から大分駅まで歩いてきたのです。どうしたの、と聞くと、電車代280円がもったいなかったから、とそう言うのです。
 こうした環境の方にとって、300円というのはとても高いのです。

 別府の中で活動していくには、300円というのは決して安い値段設定ではないのです。
 もちろん、遠方、特に東京や大阪から来られた方たちからは、安すぎるのではないか、と逆に問われることがあります。こうしたことがある度に、都市部と地方との所得格差をしみじみと感じてしまうのです。

 別府アートミュージアムという、私立の美術館は入館料700円ですが、あまり客の入りはよくないようです。まわりの人たちに聞くと、やはりその値段が高額だから、という意見が多く聞こえます。
 対して、別府市美術館という、公立の美術館は入館料100円です。それでやっとなんとか人が来るというのが、 別府の町の現状なのです。

 ゲンシシャ云々ではなく、別府市全体の所得水準を上げていかなければ、と思うのですが、私ひとりの力ではどうこうできることではありません。
 別府の地価が上がり、ホテルや旅館も高級路線を打ち出すところが増えてきました。そうしたところがもっと繁栄し、別府全体が勢いづけば、と考えています。