2019年3月22日金曜日

地方でアートをすることの困難~「地域アート」を論じる上で

 大分県立美術館での今年度の展示スケジュールが決まりました。
 夏から秋にかけてムーミン展と名探偵コナン展を開催します。
 美術館関係者から聞いていたものの、資金不足はどうやら本当らしい。国民文化祭で国からの潤沢な資金が流れ込んた去年から一転、アートは鳴りを潜め、子供連れが多く入場するような展示をもってきました。
 今年度は、予算を使い果たした反動で、大分のアート界隈は静かにしていくほかなさそうです。

 一方で、別府では近々アニッシュ・カプーアの「スカイミラー」を再公開するという噂があります。果たして「スカイミラー」単体で、いかほどの観客が見込めるかはわかりませんが、「アニッシュ・カプーアIN別府」に4億円もの資金を投じたのです。ますますの成果が出せるよう願っています。
 別府公園には「アニッシュ・カプーアIN別府」で建設した仮設ギャラリーがいまだ残っており、どう有効活用しようかと別府市役所も頭を悩ませています。
 コーヒーショップを公園に設ける話もあり、 別府駅裏の活性化につながるといいな、と淡い期待があります。

 空洞化した市内に、アートを根付かせ、富裕層を呼び込むということが一つのパターンである「アートで町おこし」ですが、なるほど、星野リゾートやインターコンチネンタルホテルが来て、富裕層も増えるかと思いますが、それはアートの力のおかげでは決してない。
 茨城県北芸術祭がパンダが来ることによりそれが一因で中止になったように、別府市はあくまで人を呼び込むための装置として芸術祭を見ています。それに対して、別府の芸術家たちは、本気で現代アートをしようと考えており、美術評論家を呼んで、力を込めて作品を発表しているのです。この温度差を痛いほど感じます。
 役所としては数字が大事なのですから。国民文化祭に延べ237万人が参加し、125億円の経済効果があったという、その事実が必要なのです。別に芸術の本質がどうこう、サイトスペシフィックなうんたらは、役所の本心としては「どうでもいい」ことなのです。それを芸術家たちは美学などの立場から考えてしまう。そこに大きなズレが生じているのです。
 これは経済学者と実際に経済に関わっている人たちを例に出すまでもなく、どこの業界でも見られることです。
 そうした言語の違いから来る、思い違い、勘違い、 そうしたものが「地域アート」をわかりにくくしています。はっきり言って運営をするのに十分な金があればいいのです。あとは付け足しにしか過ぎない。

 「地域アート」を論じる上で、美学上の論点はわりとどうでもよくて、それより観客数の水増しや、誇大広告といった大本営発表を続けている役所側の手法をどうにかしてもらいたいものです。
 そうでなければ何も変わりません。