2020年2月22日土曜日

暗黒啓蒙

 来月、ニック・ランド『暗黒の啓蒙書』の日本語訳が発売されます。
 これまで、木澤佐登志『ニック・ランドと新反動主義』を読み、その概要については触れることができたものの、ついにその本質に踏み込んでいくことになります。

 暗黒啓蒙とは、リバタリアンが目指す、既存の体制からのイグジットを志向しています。
 この思想を読み解けば、トランプ大統領のパリ協定離脱や、ブレグジットの根本にある概念もまた見えてきます。
 資本主義を推し進めていくことでその先に行けるという加速主義、また、メイヤスーらの思弁的実在論にまで影響を及ぼしている暗黒啓蒙は、もはや無視して通ることはできないものになっています。

 暗黒啓蒙は、未来派やロシア宇宙主義の思想を受け継いでいます。
 私は、特に未来派との関係に注目しています。
 未来派は、イタリア・ファシズムに受け入れられ、戦争を「世の中を衛生的にする唯一の方法」だとして、肯定しました。
 暗黒啓蒙が、同じような考え方の後ろ盾になる可能性、これは大いにあり得ることです。

 ニック・ランドは中国を、西洋のカテドラル、ポリティカル・コレクトネスに縛られない、それでいて、科学的に発展した理想郷として捉えました。
  そこを震源地としてコロナウイルスが蔓延し、反グローバリズムの動きが目立ってきています。

 『暗黒の啓蒙書』が発売されることで、日本国内での影響力がさらに増し、共鳴する人間がふえてくれば、Redditという英語圏のツールにとどまらない、さらなる展開が見られることでしょう。
 マルクス・ガブリエル 『新実存主義』が岩波新書から刊行される時代、さらにその先へ足を進めることになります。