2016年11月7日月曜日

ゲンシシャを運営している上での気づき

 今回は、書肆ゲンシシャを運営し始めて半年が経つのですが、その間に得た気づきについてお話したいと思います。

①ネットと現実は異なる

 当たり前のことですが、この点をしばしば忘れがちになっていたことに改めて気付かされました。
 ゲンシシャはご存知のようにFacebookやTwitter、InstagramといったSNSを通して広報活動を続けておりますが、こちらの反応と、現実世界での物の動き方が全く異なる、という点に気づき、大変おもしろく思います。
 Facebookでいいねが大量についても、Twitterでいくらリツイートされても、Instagramでハートマークがいくらついても、現実にその商品が動くことはありません。これが現実です。1万リツイートされた商品に関して、一度も問い合わせがなかったことが多々あります。
 ネットでの人気が購買意欲に繋がるか、と言われると、大きなクエスチョンマークがつくのです。
 逆に、ネットでまったく反応がなかった品物について、電話でお問い合わせいただき、販売したものもあります。何とも興味深い現象です。

 次に、ヤフーオークションについて。当店は、ヤフオクを通じて商品を販売しておりますが、現実に店舗にあって、どなたも興味を示さない品物でも、ヤフオクでは驚くほど多くの入札を得られるものがあります。これもまた興味深い現象です。対面販売と、ネット販売では、まったく好まれる商品が異なるのです。ネットでは全く入札がなかった商品が、店に置いておくとたちまち売れたということもしばしばあります。

 このように、商売をしていく上で、ネットと現実は完全に分けて考えたほうがいい、というのが私の結論です。 ネットと現実との差がなくなりつつある、といった言説もみられます。ですが、これは事実です。

②東京の常識が全国で通じるわけではない

 こちらは別府という地方にゲンシシャが位置することから得られた気づきです。
 東京では、マンガの博物館が国や明治大学によって建設されようとしています。安倍首相もマンガを輸出産業に育てようと頑張っています。地方ではどうか。あれほど話題になったワンピースの映画ですら、ガラガラで、全く客が入っていない状態です。ただでさえ落ち目なAKBなら尚更。AKBのファンを名乗る人間など百人いて一人いるかいないか、それが地方の現実です。
 別府では深夜アニメなどどこでも放送されておらず、マンガやアニメ好きというのは、東京以上にマイノリティなのです。

 では皆なにをしているのか。 パチンコ、ゴルフ、麻雀です。この三つを趣味としている、あるいは中毒になっている人間が大勢います。美術館も博物館も図書館もいつ行っても誰もいない。東京にあるからこそ上野の美術館に行列ができるわけで、到底地方では考えられません。

 また、人と人との距離の近さも地方ではいまだに残っています。近所からご飯のおすそ分けをいただくことも珍しくありません。回覧板と町内会によって近所の方たちはみな顔見知りです。東京でマンション暮らしをしていると忘れてしまいがちな感覚です。

 別府では店が開店時間通りに開くことなんてむしろ珍しい方で、店員の方が客に対して丁寧語を使うと、むしろ客のほうが気を悪くするという、そんな状況です。

 地方にはその地方独自のルールがあり、東京など大都市圏のルールがそのまま通用すると思ったら大間違いだということを、特に移住を考えている方には知ってもらいたい。

③まとめ

 他にも数えられないほどの気づきを得ましたが、今日のところはこの二点について書いておきたいと思います。現実とはとても奇妙なもので、まさしくゲンシシャが求める珍奇なるものとは、この奇妙な現実すべてではないか、そんなことすら思えてきます。
 今では地方の人間がそもそもマイノリティではありますが、ゲンシシャ店主もその一員として、片隅から情報を発信し続けていきます。