2019年1月6日日曜日

平成を振り返りその先へ~ある都市の今までとこれから

 昨年末、大分のローカルな新聞、大分合同新聞に平成を振り返るコラムが掲載されていました。その中で、平成元年における大分県内の有力企業は、ベスト3では大分の地元の企業が占めていたものの、平成30年においては、ダイハツやキヤノンの子会社が占めるようになった旨が綴られていました。
 東京や大阪の大企業の子会社が有力になり、大分に本社を置く企業が力を失っている。このことは友人を見渡してみても一目瞭然、裕福な暮らしをしているのは大企業の大分支社に勤めている方たち、かたや地元資本の会社に勤めている方たちは、いつ倒産するか、戦々恐々としています。

 5年ほど前までは別府の百貨店トキハでも、ロレックスの取扱があった。それが、今では大分の百貨店からも撤退している。そして、まもなくルイ・ヴィトンも撤退することが決まっています。高級ブランドが軒並み不調なのは、不景気だからというだけではなく、そうした商品を買いに、大分県在住者が福岡まで行ってしまうからです。
 大分県から福岡県までソニックという特急電車や、高速バスが出ており、大分から買い物に福岡まで出かけることも珍しくなくなりました。
 別府市内では、山側の新興住宅地で高齢化が進み、駅前の新しく建った高層マンションに相次いで高齢者が移り住む事例が増えています。車を運転できないお年寄りにとって、駅前の環境は、起伏が多い郊外より好都合なのです。東京で都心回帰が言われているのと同じことです。
 別府郊外から、別府駅前へ、という場合に加え、大分駅前、福岡と、より便利な居住地を求めて移住される方も見受けられます。人口減少が続くなか、都会に人が集中することはもはや自然の理、やむを得ないことと思います。

 そうして空洞化が進んだ別府の空き家に、都会では経済的な理由などで住めなくなったアーティストやミュージシャンたちが移り住んできています。今では絶滅したかに見えたヒッピーたちも、福島の原発事故から逃れ、別府を拠点に活動しています。

 それが今度は、インターコンチネンタルや星野リゾートを始めとする高級ホテルの建設が始まり、じわじわと再開発が進み始めました。別府市内には戦時中に空襲を受けなかったために戦前の遊郭が多く残されています。それを面白がってアーティストが利用していたのですが、取り壊し、新しい建物を作ろうという動きがより活発になってきています。道路の拡張工事や再開発を歓迎する人々もいますが、アーティストたちは反対し、食い止めようとしています。
 思えば、「アートでまちおこし」は過渡期のものでした。大手資本が高級化や再開発を進めていくと、結局、「アートでまちおこし」はどこへやら、別府もまた中規模の都市として、日常へと還っていくのです。そもそも別府で「アートでまちおこし」が行われていたことを知っている人自体が少数派なのですが。
 平成最後の年は、そうしたうねりの中で進んでいくと思います。バブル崩壊から、空洞化、まちおこし、そして、次には大手資本による再開発。
 まちおこしとは結局なんだったのか。役所が予算を使うために行った一過性のものでしかなかったのか。せめて何か残るものがあればいい。うねりの中で、実を結ぶ一年にしたいと強く誓います。